前に少し紹介したが、まだ書き足りない部分があるのでもう少し書いてみる。
この本は翻訳の技術的なことだけではなくて、英語学習に関するところなどのもう少し広く深いところまで情報が載っていて、自分としてはかなり貴重な本だった。
まず、最初の「本書の使い方」で、印象に残ったところがあった。
訳文を作る場合、特にうまく訳す必要はありませんが、隅々まで意味を正確に反映させるよう心がけてください。わからないところ、納得できないところぜったいにごまかさないのが上達への近道です。
難しい文章はうやむやにしがちなので、たしかに、わからないところは立ち止まってじっくり考えることや、いろいろ調べて何とかする努力は必要だと思った。翻訳を勉強する際の重要な心構えだと思った。
問題A-10の解説から抜粋。この問題の解説は、なかなか重要だと思った。この説明の後、ネイティブが英文を読むときの思考について解説がされている。
この本には、全体を貫く大きなテーマがひとつあります。それは「左から右に読むこと」。あたりまえじゃないか、と思われるかもしれません。しかし、日本人が犯す誤訳の多くは、そのあたりまえのことができていないのが原因なのです。
この部分は、最初は、安西先生が自らの本で割と強調されている、なるべく英語の語順で訳す、ということと同じ話かと思ったが、そうではなく単に読解の方法のことのようである。
インタビューの部分での筆者のコメント。
結局、英語を正しく理解しているか否かを知るには、訳してみる以外に方法はないんです。「英語を英語のまま理解する」とよく言われますよね。それは最終目標としては正しいんだけれど、少なくとも日本語を母語として育った人間について言えば、おそらく正しく訳せないものはぜったいに理解できていないと思います。
英語を英語のまま理解できるようになることが、TOEICで900点取れたりすることにつながると思っている。ただ、ある程度できれば900点取れると思う。そしてその後、さらに英語を英語のままきちんと理解できるようなるのは、なかなか難しいと思っていた。
英会話レッスンでは、英語の細かなニュアンスはどうやって習得すればいいのかと一時期ずっと考えていた。
英会話のイーオンのDiscussion Mattersのテキストを予習のために訳していた時期があったが、それで細かいところはわかっていないことに気づいたりした。英語を英語のまま理解したような気になっていたが、思っている以上にきちんと読めていなかった。
「訳してみる以外に方法はない」というのは、本当にそうだと思う。
下記の文章は、安西先生の『英文翻訳術』の「はしがき」からの抜粋であるが、この文章が結構頭に残っていた。これを読んだのは、翻訳の勉強をし始めた頃のこと。
印象に残ったのは、共感したからではなくて、ピンとこなかったからである。そういうものなのかな、とずっと思っていた。
翻訳という作業は、とにかく非常にこみいった、複合的なプロセスである。いろいろのレヴェルの判断を同時にくだし、総合的、多角的に処理してゆかなければならない。
この「とにかく非常にこみいった、複合的なプロセス」ということについて、この『日本人なら必ず誤訳する英文』によって、少し理解できてきた気がする。この本の説明が論理的なことによることが大きいと思う。
あと、この本の効果としては、訳すのが難しい問題ばっかり載っていて、それが高地トレーニングになっている。そのため、この本以外のところで翻訳しようとすると、そんなに難しく感じなくなるというメリットがある。
そして、この本を解いてから英文をより細かく丁寧に読めるようになった実感がある。自分にとっては非常に貴重な一冊であった。
まとめ
誤訳しやすいポイントがまとめて学習できて、お買い得な一冊だと思う。
翻訳そのものだけでなく、英語学習などより広い視点からの情報もあり、非常に内容の濃い一冊だと思う。
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