紙の本が好きなので、電子書籍は避けていたが最近、ついにKindleに手を出してしまった。
というのも、『字幕翻訳とは何か』は、印刷した本では出版されておらず、購入するとなるとKindle本しかなかったため。
レビューを見るとかなり内容は良さそうで気になっていたが、ついに購入。
アメリアで、翻訳トライアスロンという企画が開催されている。これは、3か月連続で違うジャンルの翻訳の課題が出題されて、その総合点を競うコンテスト形式の企画。
ジャンルは、出版(フィクション)翻訳、字幕翻訳、実務翻訳となっている。そして、その2つ目の字幕翻訳に参加してみようかと思い、この本を買ってみた。
(実は参加費が、1分野参加しても、3分野全部参加しても、同じということなので)
内容
最近ではAIの自動字幕翻訳などが出てきている状況であり、そこで字幕翻訳の価値を問いつつ、字幕翻訳のプロセスがこの本にまとめられている。
はじめにより抜粋。
日本映像翻訳アカデミーは「2016年創設20周年記念事業」の一環として「映像翻訳研究プロジェクト」を立ち上げ、映像翻訳が内包する高度な価値を明らかにして広く社会に発信する事業に着手した。本書は同プロジェクトによる最初の成果物である。(略) 多くの映像翻訳者が実務の中で見出した理論やルールをでき得る限り形式知に落とし込むことを試みた。
目次
プロローグ
第1章 学術的アプローチの概要
第2章 字幕 翻訳の基本 ~ 翻訳者が字幕を作るときに行うこと・考えること
第3章 字幕 翻訳者の戦略的アプローチ ~ 翻訳者が字幕を作るときの思考順序
第4章 字幕 翻訳の実践
第5章 字幕 翻訳のレジビリティ ~ 日本語表現だけにとどまらない読みやすさの追求
第6章 プロの字幕翻訳者に求められるスキルとノウハウ
エピローグ
感想
字幕翻訳に関する必要な知識や情報がかなり具体的で体系的にまとまった本だった。この内容を知っているとかなり字幕翻訳の世界に入りやすいと思う。書かれている内容を踏まえて、実際の字幕翻訳の作業を行っていくと効率的にレベルがあげられそうである。
逆に、この本に書かれているような、どういう状況ではどういう方針で訳していくか、ということを知っていないと適切な訳を作るのはかなり大変だと感じた。
字幕翻訳は、映像+音声のソースから、音声情報を文字情報に変換するものである。この字幕翻訳の特殊性をあらためて感じた。技術文書や小説などの翻訳とは全然違っている。字幕翻訳では状況によって、原文を訳さなかったり、全然別の言葉にしたり、ということがあるらしい。
全然本の趣旨とは関係がないが、「早戻し」という言葉が出てきていて、馴染みがなくて、少し調べてしまった。広辞苑や大辞林にも載っていた。意味は文脈からわかったが、早送りの反対のこと。巻き戻しではなく早戻し。
ネットなどを見ると、もう「巻き戻し」というのは死語らしい。近頃では記録媒体がVHSのようなテープではないので、もう「巻き戻し」という言葉は使わないのは納得ではあるが…。
まとめ
字幕翻訳のプロセスが、考え方などを含めて具体的に説明されている。興味のある人は、この本はマストバイだと思う。
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