以前このブログでも紹介したが、『英語の発想』が非常に良い本だった。それで、同じ著者の『英文翻訳術』を読んでみたが、こちらも非常に良い本だった。
内容
『英語の発想』の方は、英語と日本語のそれぞれの背景的な部分から翻訳について書かれていたが、この本では、文法の切り口で英語をどのように翻訳するかという、より具体的な方法について書かれている。
目次でみると、名詞、代名詞、関係代名詞、形容詞、副詞、比較、時制、受動態、仮定法、直接話法、強調構文のようになっている。
それぞれの項目で、短い例文があり、練習問題もある。そして、1章分丸々演習というところも5章分ある。演習の章では、問題に対して著者の訳例だけでなく、著者が翻訳スクールで教えていた時の受講生の訳も添削形式で掲載されている。
最後には著者のインタビューが載っていて、本書の内容をどう活用するか、考え方が書かれている。
使い方
文庫本なので最初普通に読んでいたが、実際にペンをとって訳すようにと書かれていた。それを見てから、練習問題、演習、そして例文も、一通り訳すようにした。
訳し始めて気づいたが、なんとなく読んでるのと、自分が訳したあと解説をみるのとでは、理解の深さや習得度が全然違っていた。
感想
『英語の発想』でも思ったが、本書も内容から考えるとこの本の値段は非常にお得な値段だと感じた。
本書を読む前は英語をどのように日本語にすればいいかよくわかっていなかったが、この本で基本的なことが一通り学べた気がする。自分の翻訳のレベルアップを実感した。
本書の中に下記のような記述があった。
英文解釈としてなら、こう書いてくれれば満点を出すしかあるまい。しかし、いやしくも翻訳として見る限り、これではまず0点だ。
この点は翻訳を始めようという人がはまる大きなトラップなのではないかと思う。翻訳というのは、英語の時間に習った英文和訳と同じものではない。このことは需要なポイントだと思う。
それがわかっていても学校の英語で習った英文和訳は意外と体にしみついていて、そこから「翻訳」にいくのは大変だと思っている。
この本の英文の中に江戸時代の設定の文章があった。文中に"girl"というのがあって、自分は何も意識せず「少女」と訳した。そして、訳を見てちょっとした衝撃があった。訳は「娘」となっていた。
たしかに時代小説では少女とは言わず娘と言う。納得。状況によって日本語訳が変わるというのは理解していても、それができるかどうかは別の話。できるようになるには経験が必要そうだと思った。
演習の章で、作者の訳もあるが、プロではない翻訳スクール生の訳をもとにして解説されているのは非常に参考になった。翻訳スクールで勉強している人の訳を見ると、自分はこんなにうまく訳せないなどと、自分のレベルが少し認識できたようでよかった。
最後のインタビューも非常によかった。本書の内容をどのようにとらえればよいかという結構重要なことが書かれていると思った。内容の活用法も書かれているという点で『Who Moved My Cheese?』を思い出した。
余談
ちょうど、この本を半分くらい終わらせたところで、ある大手の通翻訳会社のセミナーに参加した。そこで、ちょうどこの本が推奨されていた。その会社で教材を作る際にこの本を参考にしているくらいよい本だと紹介されていた。良い本だとは思っていたが、そういうお墨付きがあったので、その後一層やる気が高まって勉強に身が入った。
まとめ
翻訳をきっちり学習しようという人には超おすすめ。
そして、もしこの本で勉強するときは、実際に訳しながら読み進めていくのがおすすめ。習得度が全然違うと思う。
参考
『翻訳トレーニング・マニュアル』という本が出ていて、それが本書の内容の問題集になっている。こちらも既に購入していて、少しづつ進めている。
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