翻訳会社に翻訳者が登録するには、トライアルテストを受けて通らないといけない。
そのトライアルテストについての本である『トライアル現場主義!』を購入し、課題を解いてみた。
内容
この本は、100ページ強の本で、内容は下記のようになっている。
はじめに
PART1 プロへの扉を開けよう
PART2 トライアルの現場から
現場その1●プロになる前のプロ意識
現場その2●ミスの目利き
現場その3●正確さ~命にかかわるそのひとこと
現場その4●読者の気持ち
現場その5●力の出しすぎは禁物
付録 トライアルQ&A
おわりに
PART1では、トライアルテストを通って、プロになるということがどういうことかが書かれている。またそれをふまえ、トライアルテストでどのように評価されるかについても書かれている。
PART2が、本書の大部分を占めている。
5つのトライアルの課題(英文)があり、それぞれの課題を実際に解いた方々の回答例が2,3個取り上げられている。それらが、採点者の視点で、添削され、採点のポイントなどについて解説されている。回答例の最終レベル判定も記載されている。
また、添削された回答を通して、英文の訳し方だけではなく、全体的なトライアルに関する注意事項や心構えも解説されている。
ただし、それぞれの課題の訳例は記載されていない。
付録では、Q&A形式でトライアルを受ける際の注意事項や考え方についても説明がある。
感想
この本もそうであるが、課題が出されている翻訳の本では、自分で実際に訳してみるのが重要だと思っている。自分がどれくらいできるか、掲載されている他の人の訳と比べてどうかというのがわかって、自分のレベルがわかってくる。
自分の訳より良い訳だなと思った訳でも、そんなに高い評価になっていなかった。これくらいの訳でもこういう評価になるのかと思った。勉強になった。
課題の1つに、ある機械のマニュアルの問題があった。訳してみたもののちょっといまいちだった。冷静に考えてみたら、翻訳にかかわらず日本語でマニュアルを書いたことがない。それではマニュアル向きの日本語でうまく書けないのも仕方がない、と気づいた。
また別の課題では、ほとんど見たこともない機械の操作方法のマニュアルの問題であった。
かろうじて、ドラマの『Mentalist』で一度そういう機械が登場する回があったのを覚えているくらい。ネットでマニュアルを探したりして、翻訳してみたものの、なかなか厳しいものがあった。
この本はトライアルの実施側の視点からの内容で、全体的に参考になることが色々書かれている。
印象に残ったところとしてはまずこれ。
トライアルで最終的に判定されるのは、単に「上手な訳文を作ることができるか」ではなく、「いっしょに仕事ができるかどうか」です。
言われてみれば、納得。一緒に働くなら円滑なコミュニケーションは重要である。トライアルの課題の受領メールを返すとか、トライアルの訳文のファイル名のつけ方などの具体的なポイントについても触れられている。
トライアルの心理学、というコラムの内容も知っておくべき重要なことだと思った。簡単にいうと、翻訳会社が翻訳者を募集していても、それが翻訳会社の状況によって合格ラインが変わるという話。案件があり人手が欲しい時と、そうでないときでは状況が違う。当然前者のほうが合格ラインは下がる。
あと、この本は文芸翻訳系ではなく、実務翻訳系の題材が扱われているところも、個人的に貴重だと思った。
まとめ
トライアルをこれから受けようと思っている人やトライアルを受け始めた人には参考になる情報がいっぱい詰まっていて、非常に貴重な一冊だと思う。
課題を実際に解いてみて、解説を読むと参考になる部分はかなり多いのではないかと思う。
参考
この本の「おわりに」に書かれているが、最初見逃していた。この本はアメリアのコンテンツがもとになっている。アメリアの関係者の方と話して、勧められて気づいた。「伝・近藤のトライアル現場主義!」というコンテンツ。
さわりの部分だけは、アメリアの会員でない人にも公開されている。
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