翻訳の勉強をはじめるにあたり先日購入した『英語の発想』を読み終わった。 自分としては、非常に良い本だった。買ってよかった。
どんな本かというのは、まずはこの本の背表紙から抜粋。
翻訳とは、二つの言語間のギャップを、いちばんのっぴきならない形で乗り越える作業だといえる。(中略) 本書はあくまでも「翻訳の現場から」という立場にこだわり、具体的な翻訳作業の分析を通して、日本語と英語の根本的な発想・認識パターンの違いを鮮明に浮かびあがらせる。「直訳」から「意訳」への劇的な変換を迫る画期的な翻訳読本。
目次
はしがき
第一章 実例の研究=二題
第二章 <もの>と見るか、<こと>と取るか
第三章 行動論理と状況論理
第四章 客観話法か共感話法か
第五章 受動態と受身
文庫版あとがき
内容
翻訳という視点で、英語と日本語の違いが書かれている。作者は、なかなか進まないと自分でも言いつつ、途中いくつかの著作を引用しながら、日本語の分析をする。
そして日本語と英語の構造などの違いを明らかにして、いくつかの例をもとに翻訳の方法が確認される。例はそれほどは多くなくて、一つ一つの例をもとに深く掘り下げられている。
文法的には、英語は名詞中心で日本語は動詞中心だとか、無生物主語、直接話法/間接話法、受け身などについて英語と日本語の違いについて書かれている。直接話法と間接話法の間の描出話法というのは知らなかった。(習ったけど覚えていないだけかもしれない)
途中1つだけ、童話の例があげられているが、作者によると『学術的な論文などの翻訳より、はるかにむつかしい』とのことで、『私のこの試訳なども、はたしてどこまでその難関を抜けえているか、怪しいものだ』と書かれている。直訳の文章から、表現を変えていくプロセスが紹介されているが確かに難しそうである。
『翻訳の布石と定石』
この本と同時に『翻訳の布石と定石』という本を購入した。工業英検の勉強のためにこれを一通りやろうかと思って進めようとしている。この本では、この英語の文法のパターンはこのように訳すべき、そうすると日本語として自然になる、ということが体系的に書かれている。例文も多く載っているし、問題もある。しかし、なかなか進まない。この本を読んでいるとたびたび睡魔に襲われ、屈してしまった。
その理由が、『英語の発想』を読んでいてわかった。
『翻訳の布石』では、最終的な結果として、この英語のパターンはこう日本語にすればいいということだけがまとめて書かれている。しかし、どうしてそうなるかという考え方や背景の説明がない。なので、確認のための参考書としては非常に良い本という気はするが、この本をいきなり勉強するのはなかなかハードルが高かった。
一方、『英語の発想』の方は、それぞれの言語の特徴や違いなどと、具体的な翻訳の内容が関連付けて説明されている。色々な文法のパターンが網羅されているわけではないが、英語、日本語の構造や特徴についても分析されていて、考え方が書かれているので、非常に翻訳についても理解しやすい。
『翻訳の布石』はまだほとんど進んでいないが、『英語の発想』と内容がかぶっているところは多そうなので、今後こちらの本もより理解して進められそうな気がする。
感想
内容が濃くて極めて価値のある良い本だった。内容が価格をはるかに上回っている。まだ今年3分の1も過ぎていないが、今年読む本の中で上位にランクインすると思う。
英語の文法についてはテストなどのために勉強するが、母国語の日本語の方は普段何気なく使っていて深く文法について考えたことがない。そういう意味でこの本の日本語の説明は非常に勉強になった。
引用されていた日本語に関する本などは既にネットでチェックしていて、また近いうちに買ってしまうかもしれない。
一番最後で、英語と日本語の違いについてのまとめが記述されているが、その終わり方は非常によかった。余韻が残って、本全体が引き締まる終わり方だと思った。
非常に良い本であった。
★★★★★
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